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驚きと感動のカット体験を。ナノパウダーメタル

特殊鋼「ナノパウダーメタル」ってどんな鋼材?
東京大学 朝倉博士に
詳しく聞いてみました!

右:東京大学大学院 工学研究科 マテリアル工学専攻(人間総合科学大学 非常勤講師) 工学博士 朝倉 健太郎博士
左:ミズタニシザーズ 製品開発部 柴田 卓也
柴田:本日はお越しいただきまして誠にありがとうございます。
これから朝倉博士にミズタニシザーズで好評をいただいている鋼材「ナノパウダーメタル」についてお聞きしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。では博士、まず率直にお聞きしますが、なぜナノパウダーメタルは通常の鋼材と比べてよく切れるのでしょうか?
朝倉博士:はい。一般の刃物、文房具のハサミを含めてのものですが、実は非常に軟らかい鋼材でできているんです。硬さですと、ビッカースという硬さの指標になりますが、HV300〜HV350くらいの硬さになります。また、通常の理美容鋏の鋼材はHV690前後ですが、ナノパウダーメタルの場合には、HV700〜HV750の硬さが出るんですね。一般の刃物に比べると倍の数値になりますから、非常に硬い。硬くて、なおかつ脆くない。つまり、物を切ったり、髪の毛を切ったとしても、それは刃こぼれがしないわけですね。
実は、髪の毛といいますのは非常に硬いもので、皆さん軟らかいと思っているかもしれませんが、銅の細い線、つまり髪の毛と同じ太さ、例えば100ミクロン(0.1ミリ)ですと、髪の毛は銅線と同じ硬さがありますので、通常は刃こぼれを起こしてしまいます。つまり理美容師さんは、いつも髪の毛という硬いものを切っていると言えます。
それがですね、均一で微細な析出物(せきしゅつぶつ)を持つナノパウダーメタルは硬くて、それでいて脆くないという特徴を持つ材料になりますので、欠けない、刃物寿命がとても長いハサミということになります。
柴田:ただ、通常、硬い素材で鋭い刃付けをすると、やっぱり刃こぼれとかが多くなるじゃないですか。
朝倉博士:はい。
柴田:その微細な組織というのがあるおかげで、さらに鋭い刃付けが可能になるということで…
朝倉博士:そうですね。これも結論ですけども、ナノパウダーメタルには均一で微細な析出物が分布しているということです。通常はですね、析出物を出させますと、そこのところが大きな突起となって出てしまうんですね。
柴田:顕微鏡で見るとわかるサイズですね?
朝倉博士:そう。顕微鏡で見ると。そういった大きな析出物が出るところが鋭い刃付けをするときに邪魔してしまうということになります。
柴田:それでは、なぜナノパウダーメタルは鋭い刃付けでも脆くならないんでしょうか?
朝倉博士:それはベース自体が硬い材料を使っているということと、適切な熱処理をしているというところにあるわけです。通常は「硬い=欠けやすい」。これは、ガラスで説明すると分かるんですけども、ガラスはポンと叩くとバリバリと割れますよね。あれは硬いからなんですよ。軟らかければポコンと引っ込む程度でいいんですけどね。硬いということが切れるという最初の秘訣なんですよ。
でも、硬いだけでは析出物が出ている意味がないんですね。“微細”な析出物が均一に素材内に存在しているから、力を緩和してくれるわけです。ということがありますので、よく切れて、刃こぼれしないということになるわけですね。
ただ微細な析出物を出すためにはその適切な熱処理というのものが必要になります。それから組成もね!刃物のベースを支えている成分がどのような割合で入っているかということが重要になります。これはミズタニさんが持っている技術的なノウハウですので、そこまではオープンにはできませんけども、そういった材料を使ってハサミを作っているということです。実に素晴らしい技術の集積なのです。
※析出物(せきしゅつぶつ) 母相と異なる結晶構造を持つ相(炭化物など)